デジタルとアナログのはざま

2017.03.21

 
飛騨市の古川で進めていた「飛騨の広葉樹を使った商品開発」プロジェクト。市が主催する「広葉樹のまちづくりシンポジウム」にて、その成果物を展示してきました。
 
当初は私がデザインしたものを、地元の腕利き職人に作って貰う筈だったのですが、形態や構成の難しさと納期が十分でないことを理由に製作を断られてしまいました。
 

 
残念でしたが、悔しさが勝って自ら作ることを決意。本仕事の発注元である「飛騨の森でクマは踊る・通称:ヒダクマ」はFabCafe Hidaを運営し、旧い酒蔵を改装した素敵な空間に様々な工作機械を揃えています。
 
アメリカの大学院で工作機に触れた経験を活かせるかもと、まだ雪深い飛騨古川にのりこむこと丸二日間。ヒダクマの浅岡さんに手伝って貰いながら奮闘し、スツールを四つ作りあげました。職人が作れないと言ったのに、素人の私が製作できた理由は、デジタル・ファブリケーションの知識を持っていたこと。通常、家具などの工作物は最低でも二段階の製作プロセスが必要です。完成物の製作に入る前に、工作機に木を的確にあてがう「冶具」と言われる「ガイド」を先に作らなくてはなりません。この裏方作業が納期問題の本丸でした。

 
一方で、デジタル加工機は即物化が得意。3Dプリンターは一つの製作工程で複雑な完成品を精製しますが、残念ながら広葉樹という自然素材は扱えません。広葉樹を直接加工するならNC旋盤ですが、これも木目の繋がりを意識したデザインには不向きでした。そこで製作プロセスに対する視点を変え、第一段階の冶具製作をレーザーカッターにて簡略化、第二段階は自分の手で広葉樹そのものと向き合うことにしました。結果、高い精度のデジタル冶具が私の技量不足を十分に補い、なかなかの完成度に仕上げることが出来ました。  
 

 
デジタル派か?アナログ派か?日本では職人気質を敬う傾向が強いですが、技能の世代継承が局面にあることは注視されていません。もはやどちらが優れているかの一辺倒な議論には意味がなく、これからは双方を自由に行き来するモノ作りへのシフトが重要であると改めて実感。せっかくの貴重な体験だったので、売れるスツールへと昇華させるべく今後も改良を重ねて参ります。